2022年3月28日に福岡地方裁判所口頭弁論にて原告住民が読み上げた意見陳述書の内容を紹介します。
令和3年(ワ)第3166号 建築工事差止請求事件
令和3年(ワ)第3565号 建築工事差止請求事件
原告 クレスト小笹管理組合 他23名
被告 株式会社田中構造設計
1 差止請求事由について
「クレスト小笹」は、1995年10月に竣工し、私は同年11月から居住しております。近くに小学校、中学校、金融機関、公園、スーパーマーケット、医院等があり、本件建物が建築されるまでは、何より日当たりの良い住環境でした。
戸建ての様な庭はありませんが、ベランダに洗濯物を干せば気持ちよく乾き、プランターで小さな家庭菜園も楽しめました。桜の季節には、南東の視野に公園の桜が見通せる自慢の眺望がありました。
すべて過去形です。私たちの「クレスト小笹」の南側に僅か1.5メートルと近接する本件訴訟対象の11階建て賃貸専用マンションが建設され、住環境は悪化したのです。日当たりが良く、洗濯物が良く乾き、ベランダで家庭菜園が楽しめる住環境が侵害されたのです。毎年種まきから始めていたプランターの野菜は、建設工事が始まると日当たりが悪くなり、発芽さえしませんでした。現在工事用に目隠ししていた「防音シート」が撤去され、南側には、賃貸マンションの廊下や階段ドアなどが迫って見えます。南側は窓を開ける気にもなりません。なぜなら、私たちの居住する「クレスト小笹」のプライバシーが覗かれるからです。しかも、我々のマンションに目隠しを付けろ、と、田中構造設計から要求されています。形式的に田中構造設計の都合だけで開催された説明会では、田中構造設計が建築する賃貸マンションの方に、プライバシー保護のために目隠しを設置すると約束していたにもかかわらず、です。
次に,境界の石垣についてです。賃貸マンションの建築が始まってから、石垣が私達の居住する「クレスト小笹」側に膨れてきたのです。石垣の上部に設置されていたコンクリートブロックからは、コンクリートが崩壊して、破片が「クレスト小笹」敷地内に落下しています。もともと木造二階建ての一般住宅が建っていた土地に、何ら補強工事もなく11階建ての賃貸マンションを建築することが果たして適法な行為なのでしょうか。境界付近に設置されているクレスト小笹の立体駐車場や側溝には、ワンルームマンション建設が始まった直後から落下したコンクリート破片が散見されます。田中構造設計の現場代理人は、被害が出れば弁償すると説明しましたが、私たちは、石垣やコンクリート塀が崩壊するのではと、脅えながら生活していかなければならないのでしょうか。
2 スラップ訴訟について
本件建築差止訴訟に関して、時間稼ぎ、嫌がらせと思われる訴訟が田中構造設計から提起されています。訴訟を提起されれば、応訴のため裁判所に出頭しなければなりません。すなわち仕事を休み相応の費用を負担しなければならないのです。また、高額な損害賠償請求の圧力により、訴訟関係者はそれまでのような自由な表現活動が委縮してしまったように思います。
スラップ訴訟について、アメリカ合衆国では、反スラップ法が制定、運用されているとのことですが、残念ながら日本ではスラップ訴訟を規制する法律は無い様です。このようなモラルのない企業による建築工事を到底認めることはできません。
3 裁判所に望むこと
私たちは、総戸数18戸の小さなマンションに居住する者です。福岡市が定める条例の主旨を軽視し、人権を軽視し、建築してしまえば勝ちの様な田中構造設計のやり方には、どうしても納得できません。裁判所の賢明な判断をお願いします。