田中構造設計問題 フェリス小笹 裁判(旧アイズ小笹 福岡市中央区小笹1-5 建築主;田中構造設計/田中忍社長 ), ホームページ裁判
フェリス小笹問題
How is Feliz Ozasa’s Trouble going ?
 フェリス小笹 建設問題
ホームページ裁判第口頭弁論(2)
 

2021年12月27日に福岡地方裁判所口頭弁論の被告代理人弁護士が読み上げた意見陳述書の内容を紹介します。
 
令和3年(ワ)第3416号 
損害賠償請求事件
原 告  株式会社田中構造設計
被 告  A 
福岡地方裁判所第6民事部合議A係 御中 
令和3年12月27日   
被告訴訟代理人弁護士 甫 守  一 樹

弁護士意見陳述書 ①

今回の訴訟に関して、被告Aさんの訴訟代理人としてだけでなく、法曹の末端にある弁護士として、次のとおり意見を述べます。

 

1 表現の自由とスラップ訴訟
表現の自由――憲法21条1項によって明確に保障され、他の憲法上の権利との関係においても「優越的地位」にあるとされている権利です。表現の自由は、民主的な政治過程や思想の自由市場の維持にとって不可欠であるだけでなく、個人が自らの有する可能性や人格を十分に発展させたり、自律的な生を生きるためにも必要な、特別な価値を有するものと考えられています。その一方で、表現の自由は、傷つきやすく萎縮しやすい特別な危険性があるとされています。表現の自由の「優越的地位」は、積極的な意味でも、消極的な意味でも、正当化されるものです。
現代において、裁判所を舞台として、この表現の自由に対する大きな脅威となっているもの、それがスラップ訴訟です。
スラップ訴訟とは,1980年代,アメリカでその問題性が指摘された訴訟の特質を表す言葉で、当時からアメリカではその対策が重要な課題になっていました。“Strategic Lawsuit Against Public Participation ”の頭文字をとったもので、直訳すると「公的参加を妨害することを狙った訴訟戦術」。具体的には、「公に意見を表明したり,請願・陳情や提訴を起こしたり,政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ,威圧し,苦痛を与えることを目的として起こされる報復的な民事訴訟」と理解されています[1]。スラップ訴訟を提起する主体には、公権力の直接的な担い手だけではなく、公共の利害に関わる事業を行っている企業も含まれています。最近では、環境法の教科書でも、スラップ訴訟について、「マンション建設に反対する周辺住民が、建設予定地付近に、事業主体を批判する幟や旗を立てたり横断幕を掲示したりしたような場合において、経済的に優越する事業者が、「反対運動により名誉毀損されたので慰謝料を支払え」「営業活動を妨害する一切の反対行動を停止せよ」などと主張し、勝敗に関係なく、報復的意図を持って住民に応訴を強いるべく圧力をかけ、反対運動をつぶしにかかることが目的とされる」と紹介されています[2]
 
[1] 内藤光博「スラップ訴訟と言論の自由-名誉毀損損害賠償裁判を利用する言論抑圧の問題性-」
[2] 吉野夏己「スラップ訴訟と表現の自由」
2 本件訴訟がスラップ訴訟であること
さて、今回、図らずも被告とされてしまったAさんは、この裁判所からもそう遠くない、福岡市中央区小笹の住宅街に暮らし、音楽をこよなく愛する一般市民です。Aさんは、田中構造設計が計画している高層マンションが自分たちの地域の住環境に大きな悪影響を与えることを知り、マンションの管理組合や他の住民たちと一緒にこの建設に反対して、ホームページ上でこれに関する田中構造設計の違法不当な対応について批判したり、議会への請願をしたり建設禁止の裁判を起こしたりしてきました。自らの利益ばかりを重視する建設会社の事業によって生活に多大な被害を受ける一住民として、当たり前の行動をとってきただけです。私たちは、Aさんに求められて、田中構造設計を批判するホームページの記載が法的に問題ないことは何度もチェックしてきました。
田中構造設計の田中忍社長にとって、Aさんたちの行動が目障りで不愉快極まりないものだったことは、保全事件の裁判などで何度かお会いしただけの私たちでも分かります。今回の田中構造設計の根拠不明な1000万円もの高額な損害賠償の請求は、明らかに、Aさんたち近隣住民を黙らせ,威圧し,苦痛を与えることを目的として起こされた報復的な民事訴訟、つまりスラップ訴訟です。
大変残念なことに、私たちがどんなに励ましても、Aさんたちが、瀬戸弁護士からの通知や今回の訴訟によって威圧され、表現活動が萎縮してしまっていることは明らかに感じます。今後もこのような裁判がまかり通るようであれば、企業を批判するような市民の自由な表現活動は、事実上できなくなってしまうでしょう。
今後、私たちは原告の訴訟提起を不法行為とする反訴を提起する予定です。その中で、憲法の番人たる司法としての然るべき見解を示していただきたいと考えています。
 
3 本件記事及び本件発言の公共性、公益性について
原告が不法行為と主張している表現行為は、すべて、自ら建設を進めている「アイズ小笹」に関し、その計画や工事の進め方を批判する内容のものです。
「アイズ小笹」のような高層マンションの新築は周辺の住環境に多くの影響を与えるものですから、その計画や工事の進め方に関する表現活動には、当然、公共性や公益性があります。特に長年マンション建設ラッシュが続く福岡市では、「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」を制定して「中高層建築物等」や「特定集合住宅」を建設しようとする「建設主等」に対しては一定の義務を課しており、「アイズ小笹」についてはこの条例にしたがって市からの指導を求める請願も出され市議会で審議されているのですから、公共性や公益性は疑う余地はありません。
 
4 本件記事、本件発言の真実性等について
原告の田中構造設計は、Aさんのホームページの22個の記載や、住民のインタビューにおける3つの発言を指摘し、すべて虚偽だと主張しています。
しかし、たとえば擁壁のふくらみや亀裂については、写真をみれば客観的に明らかなことです。保全事件の審尋期日において、第4民事部の裁判官からも、確かにふくらみがあり、住民がそれについて不安に思っていることは理解できるという認識が示されていることは、原告も間違いなく知っています。そうであるにもかかわらず、未だに擁壁のふくらみを認めないばかりか、これを正当に指摘するAさんのホームページの記載等を虚偽の不法行為と主張しているのです。
家屋調査について、原告は、簡易な外部調査しかしておらず、今後希望者については内部の調査も実施すると、住民説明会ではっきりと約束していました。保全事件の審尋期日で、家屋調査を実施しないのかと問われると、田中忍社長は、「初めはするつもりだったが、その後の経過を踏まえて、住民の皆さんとは取引しないことにした」等とおっしゃっていました。原告は、家屋調査の約束を反故にしたことを十分自覚しながら、家屋調査は実施したと強弁しているだけなのです。
また、原告は、Aさんたち住民の方々と説明会などで顔を合わせている訳ですから、事前の説明が不十分だと指摘を受けていることは、勿論知っています。福岡市から住民説明会や家屋調査について指導を受けていることも、勿論知っています。
要するに、原告は、Aさんのホームページや住民のインタビューの内容が、真実、正当であることは十分分かっているのです。分かっているのに、分かっていないふりをして、虚偽だ虚偽だと言い張っているだけなのです。
 
5 終わりに
    私たちは、従来の実務において真実性・相当性の抗弁、あるいは公平な論評の法理などとして立証責任が被告側に課されていることを考慮し、原告の主張に対応する個別具体的な主張立証をしました。今回は、偶々、クレスト小笹管理組合で説明会などの録音や文字起こしを作成していましたのでこれができましたが、報道機関や出版社であるならまだしも、一市民のホームページの個別の記載やインタビューでの発言を訴訟で殊更に取り上げ、そのような立証を強いること自体、本来はおかしなことであり、違法であると考えます。
現在は第5民事部に係属しておりますが、原告は、Aさん他1名の住民が、擁壁のモルタルを剥がしたと何の根拠もなく主張する別訴も提起しています。
第5民事部には併合上申を提出する予定です。この第6民事部において、「アイズ小笹」建設に関わるこの紛争全体について、法と正義に適った判決が出されることを期待しています。   以上
 


 
田中構造設計の問題点は報道系のネットニュースでも見ることができます。
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