田中構造設計問題 フェリス小笹 裁判(旧アイズ小笹 福岡市中央区小笹1-5 建築主;田中構造設計/田中忍社長 ), ホームページ裁判
フェリス小笹問題
How is Feliz Ozasa’s Trouble going ?
 フェリス小笹 建設問題
ホームページ裁判第口頭弁論
 

2022年4月25日に福岡地方裁判所口頭弁論の被告代理人弁護士が読み上げた意見陳述書の内容を紹介します。
 
令和3年(ワ)第3416号 
損害賠償請求事件
原 告  株式会社田中構造設計
被 告  A
被告訴訟代理人弁護士  花 田 弘 美
 

弁護士意見陳述書 ❸

今回の訴訟に関して、被告の訴訟代理人として、次のとおり意見を述べます。
1 はじめに
 これまで、本訴訟が、被告の管理するホームページに対し名誉毀損であると主張し多額の損害賠償を請求することによって、原告のマンション建築に反対する被告やクレスト小笹の住民らの自由な表現活動を抑圧しているスラップ訴訟であることは、すでに主張したとおりであり、令和4年3月31日付で提起した反訴においても、本訴訟がスラップ訴訟であることにつき主張しています。そこで、スラップ訴訟がどのような問題を有しているかを詳論いたします。

 

2 スラップ訴訟は市民の表現の自由を脅かすこと
 スラップ訴訟は、アメリカでその問題性が指摘された訴訟の特質をさすもので、「公に意見を表明したり、請願・陳述や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、苦痛を与えることを目的として起こされる報復的な民事訴訟」と理解されています[1]。よく引用される典型例は、開発業者が、邸宅エリアの近くで商業施設の建設を計画し、市民グループがその開発に反対し、公聴会に出席し、手紙やステイトメントを関連する市当局に提出し、あるいは、手紙を地方紙の編集者に送付したことに対し、開発業者が、市民グループや個人をターゲットとして名誉毀損や契約干渉など数々の不法行為を主張して訴訟を提起するというものです。この場合、開発業者は、証拠開示や様々な申立てを行い、手続きを引き延ばし、ターゲットに過度の負担を強い、数年間の訴訟の後、ターゲットは裁判で結果的に勝訴するが、同訴訟の防御に費やされるコスト、ストレス、時間は、コミュティーや市民グループを仲間割れにさせたり、その負担ゆえに、メンバーのエネルギーや財政的リソースを搾り取り、効果的に市民グループの公的政策決定への参加をくじいてしまい、表現の自由、請願権を行使したために市民グループを処罰するということになってしまいます。すなわち、スラップ訴訟は、裁判における勝訴を目的とするものではなく、戦略的なもので、ターゲットに対し脅しの意味をもつもので、その多くは、報復により動機付けされており、市民の反対運動を止めさせたり、市民の発言に対して制裁を加え、政治活動に対抗・圧迫するために利用されているのです[2]。ゆえに、スラップ訴訟は、「裁判としては意味をもたない提訴」といえます。
 他方で、開発業者などの企業に立ち向かう市民は、自身やその家族、地域のコミュニティーの生活環境を守るべく、表現の自由に基づいて、財政的にも時間的にも限定されたなかで反対運動を行っています。
[1] 内藤光博「スラップ訴訟と言論の自由―名誉毀損損害賠償裁判を利用する言論抑圧の問題性-」
[2] 吉野夏己「スラップ訴訟と表現の自由」 
表現の自由は、憲法21条1項により明確に保障されている権利であり、その重要性から優越的地位にあります。憲法における民主主義を貫くうえでも、企業や政府機関に対する批判や意見表明は必要不可欠な権利です。その反面、表現の自由の性質上、表現活動の内容によっては企業や政府機関にとって都合が悪いものもあり、それゆえに最も権力によって傷つけられやすく、不当な制限を受けやすいという面もあります。
 そして、スラップ訴訟は、市民の企業に対する批判をする、反対運動をするという表現の自由に基づく活動をまさに抑圧するものであり、憲法の保障する表現の自由を不当に制限し、脅かすものです。
 
3 スラップ訴訟による萎縮効果
 スラップ訴訟は、その目的が「公に意見を表明したり、請願・陳述や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、苦痛を与えること」であるため、いまだ訴えられていない市民や潜在的な発言者に対して、多額の損害賠償を請求される危険性があるという意識を植え付けるものであり、本来であれば自由であるはずの表現活動を控えさせるという萎縮効果を生じさせます。
 スラップ訴訟による萎縮効果により、市民は自身やその家族、地域のために企業に対する反対運動を行うことを控え、ひいては、市民は自分の権利を守るために十分に活動をすることができず、企業や政府機関によって市民の権利が侵害されることを甘んじて受け入れることとつながりかねません。
 
4 名誉毀損における判断基準はスラップ訴訟では不十分であること
 名誉毀損の判断は、公然と事実の摘示がなされ、当該事実が社会的評価を低下させるものである場合に成立しますが、違法性阻却事由として、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的があり、当該事実が真実であるかもしくは真実と信じるにつき相当の理由がある場合が挙げられています。すなわち、被告が、公共の利害に関する事実であること、公益を図る目的であること、真実であるかもしくは真実と信じるにつき相当の理由があることを主張立証していかなくてはなりません。これは、名誉毀損であると主張して提起されたスラップ訴訟でも同様です。
 しかし、スラップ訴訟においては、被告が表現活動を行ったゆえにその活動を抑圧されているだけでなく、違法性阻却事由の主張立証という負担まで負わされることとなってしまい不相当であることは明らかです。また、裁判所において、スラップ訴訟においても名誉毀損の一般的な判断基準を用いることによって、企業や政府機関におけるスラップ訴訟を容認し、スラップ訴訟により生じた萎縮効果をも容認することとなりかねません。
 
5 おわりに
 昨今、スラップ訴訟の問題が議論されるようになり、各種法学雑誌でもその議論に関する記事の掲載がみられます。本訴訟がスラップ訴訟であることは明らかですので、裁判所においては、スラップ訴訟のもつ問題点や危険性を適切に把握し、裁判において市民が当然に有する表現の自由が抑圧されることのないよう判断がなされることを期待いたします。

以上

 
田中構造設計の問題点は報道系のネットニュースでも見ることができます。
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